伝統的蛸壺の漁法
答志島は別名タコの島と呼ばれるほど、タコ漁がさかんな島。
答志島は、鳥羽港の北東約2.5kmに位置する鳥羽湾最大の島であり、答志、答志和具、桃取3つの集落から成り立っている。1日に何度も定期船が出ているので日帰りも可能な観光島だ。
5月末、まだタコ漁には少し早い時期ではあるが、お願いして蛸壺漁に同行させてもらった。
鳥羽から高速船にのり30分、海なし県人としては、海を見るだけで気持ちが躍り、あっと言う間に答志島に到着。
島のあちらこちらには蛸壺が山と積まれており、その名のとおりであることを物がっていた。
伊勢湾で育つ伊勢海老や鮑などを餌にしている答志島でとれる蛸は、足が太くて身が締まっていることが特徴と言われている。
蛸が伊勢海老やアワビを食べているとは、なんと贅沢なのだろう。
朝6時。うっすらと明るくなった港から出航。少し波が高く、小さな船は大きく揺れていた。
カメラを持つ体が時折大きく揺れ、「大丈夫か?」と声を掛けられる。
「大丈夫です」という声は波しぶきにかき消さられていた。
20分程船を走らせ沖に出ると前日に仕掛けた蛸壺を上げてく。
蛸が固い物に入って身を守るという習性を活かした伝統的な漁法蛸壺漁だ。
2キロ近くある蛸壺をひょいひょいと引き上げたり、海に投げ入れたりをご夫婦2人でリズミカルに行う。不安定な船の上で軽快に漁を続ける漁師さんはやっぱりすごい。
引き上げられた蛸壺から出てきた蛸は、ぬるぬると体をくねらせ、想像以上よりすばやく動いていた。
掴みあげる漁師さんの手に吸盤が強く吸い付き、どんどん腕を登ってくる。
力をいれても離れようとしない蛸に思わず漁師さんも苦笑いだ。
おせちで使われる蛸は、港で新鮮な内に下処理され、おせち工場に届きます。
蛸をふっくらと仕上げるために、特製のタレで蒸し上げた後に、鍋でコトコトと煮込みます。
一度蒸した蛸は、加熱煮込み時間が短くなり、ふっくらとした仕上がり。
この蛸が御節に盛り付けられ、皆さんの元にお届けするその日まで。
おせち工場は今日も元気に湯気をあげています。